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新国立競技場問題まとめ―ゼネコン提示の総工費は東京ディズニーランド2個分

新国立競技場問題まとめ―ゼネコン提示の総工費は東京ディズニーランド2個分

新国立競技場問題まとめ―ゼネコン提示の総工費は東京ディズニーランド2個分新国立競技場の総工費は東京ディズニーランド2個分!?
安倍晋三首相は2015年7月17日、関係閣僚に2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設計画見直しを指示した。

読売新聞社が2015年7月10日に行ったアンケートによると、建設に反対と答えた人は全体の95%にものぼるという。

いったい何がそんなに問題だったのか。

今回は新国立競技場問題について解説する。

問題点①ケタ違いの巨額の工費

新国立競技場のデザインに採用されたザハ・ハディド氏の案。

新国立競技場

新国立競技場の完成予想図。全高は70メートル。20階建てのマンションに相当。

世界に日本の先進性を発信するための新国立競技場。

屋根を支える2本の「キールアーチ」が目をひくデザインだが、承認された総工費はなんと2千520億円。

そのうち「キールアーチ」は1本で500億円もするという。

2009年にできたマツダスタジアムの総工費が90億円、つまりアーチ1本でマツダスタジアムが5つ建てられる計算だ。

なぜここまで巨額の工費がかかるデザインにGOが出たのだろうか。

デザイン選考の審査委員長を務めた建築家の安藤忠雄氏が2015年7月16日、都内で会見した。

安藤氏は採用されたザハ氏のデザイン案について、世界に日本の先進性を発信し、優れた日本の技術をアピールできるデザインだったと評価。

技術的な難しさとコスト面の課題はありつつも、技術面に関しては「日本の技術力を結集することで実現可能」で、コスト面は「ザハ氏と日本の設計チームによる次の設計段階で調整可能と考えた」と説明。

記者会見する建築家の安藤忠雄氏 2015年7月16日午前、東京都千代田区 (大西正純氏撮影)引用元:産経ニュース

記者会見する建築家の安藤忠雄氏 2015年7月16日午前、東京都千代田区 (大西正純氏撮影)引用元:産経ニュース

当初は総工費1千300億円を目安にデザイン案が公募されていたが、選ばれたザハ・ハディド氏の案は3千億円を超えることが判明。

スケールを縮小して工費を1千625億円に圧縮するはずだったが、基本設計時の見積もりより約900億円増え、結局2千520億円でGOサインが出たのだ。

ちなみに、東京ディズニーランドの建設費は1千580億円。

さらに過去の五輪メーンスタジアムの総工費を見てみると、2000年のシドニーが683億円、2004年のアテネが367億円、2008年の北京が511億円、2012年のロンドンが843億円、2016年ブラジルが548億円。どう見ても東京だけが突出して高い。

しかも、全天候型の開閉式屋根の設置は、五輪後に先送り。

また、スタンドの約8万席のうち、電動の可動式を予定していた約1万5000席も、仮設の簡易着脱式になる。早くも情けない事態に陥っていたのだ。

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完成後も巨額の維持費で赤字確定

当初は五輪終了後も活用するため、年間3億3千万円の収益などが見込まれるといわれていた。

しかし2015年7月7日に提出された収支計画によると、その額は10分の1の3千800万円に減少していた。

減り過ぎである。

しかし維持管理費は推計で年35億円(旧国立の7倍)もかかるため毎年35億円近い赤字を出し続けることが確定的とみられている。

着工ゴリ押しの影に森喜朗元首相

読売新聞社が2015年7月10日に行ったアンケートによると、建設に反対と答えた人は全体の95%にものぼる。

それでも、なぜ計画は止まらないのだろう。

実は国民の95%が反対しているにもかかわらずゴリ押ししている人間がいる。

森元首相である。

森喜朗元首相が、ラグビーW杯を新競技場で行いたいという思いがあるからだ。

森元首相は早稲田大学のラグビー部出身。W杯の自国開催は悲願だった。

ラグビーW杯開催は、五輪開催の前年となる2019年。そのため着工を急いでいるのだ。

森元首相は東京都にも500億円の負担を半ば強要。

舛添要一知事に対して『自民党はもう君を推薦しないかもね』とちらつかせるなど、強引に計画を推し進めている。

【2015年7月17日 16:30追記】
安倍首相は2015年7月17日、首相官邸で記者団に2019年9月に開幕するラグビーのワールドカップ(W杯)には新競技場の整備が間に合わないことを明らかにした。これにより、森元首相の悲願は打ち砕かれることになった。

それ以外のカネは民間頼みだ。

会場の命名権の売却や寄付などで企業から200億円を集めたい考えだ。

しかし、五輪中は会社名を伏せることになるため、金額に見合う宣伝効果が見込めない企業は二の足を踏んでいる。

それに、たとえば横浜の日産スタジアムでも、命名権の金額は現在、年1億5000万円。200億円も集められるのか甚だ疑問なのだ。

後に引けないのは、安倍晋三首相も同じだった。

2013年9月にアルゼンチンで行われた五輪招致演説で、「どんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから確かな財源措置に至るまで、東京大会はその確実な実行が確証されたものとなります」と宣言した。

足りないお金を払うのは国民

新国立競技場の施工にあたり、国が手元に確保できている財源は501億円だけ。

つまり、残りの約2千19億円は借金をすることになる。そして、その借金を払うのは国民だ。

そんななか政府が財源として見込んでいるのが、スポーツ振興基金

ここから半額となる125億円を切り崩し、さらにスポーツ振興くじ「toto」の売り上げから毎年100億円を充てるという。

しかし、このお金は本来、選手育成のために使われるものだ。

W杯で準優勝のなでしこジャパンは、年間強化費が約2億円。大半のメンバーが年俸300万円前後で、澤選手でさえ500万円程度。ほかの仕事をしながらプレーしている選手もザラだ。

五輪で活躍するためにも、強化費の増加は急務。

なのに彼らに充てるはずのお金を削ってまで新競技場を建てる意義はあるのだろうか。

そもそも2千520億円でも全然足りない

2千520億円で承認された総工費だが、大手ゼネコンなどの試算によれば、総額は3千億円にのぼると見られていた。

施工予定のゼネコン、竹中工務店と大成建設も、3000億円超になるとの見込みだった。

さらに五輪後の屋根の設置費用は数百億円にのぼるとされ、完成後も我々の血税が食いつぶされるわけだ。

コンサート開催やプロスポーツなどで民間に貸す場合も、高額な使用料がネックになって稼働率は上がらず、整備費は回収しにくいだろう。

問題点② 間に合わない

カネの問題だけではない。憂慮すべきなのは、タイムリミットまでに完成するかどうかだ。

解体が終わった旧国立競技場跡。新国立競技場の敷地面積は約11万3000㎡。周囲は良好な自然的景観を維持する、都の「風致地区」になっている。

解体が終わった旧国立競技場跡。新国立競技場の敷地面積は約11万3000㎡。周囲は良好な自然的景観を維持する、都の「風致地区」になっている。

計画では着工は2015年10月。

2019年9〜10月のラグビーW杯に間に合うよう、同年5月に完成が予定されているが、間に合わないのではという意見が噴出している。

オーソドックスな形の日産スタジアム(7万2000席)でも、工事期間は3年9ヵ月を要した。

2015年10月に始めるとして、同じ建築物なら2019年6月に出来上がる。頑張れば工期を短縮することも可能だ。しかしそれは”まともなデザイン案”の場合の話だ。

ザハ氏の提案する2本のキールアーチは全長370m。

これは東京・隅田川に架かる永代橋(えいたいばし)の2倍の長さだ。

アーチ1本の重さは、3万t(トン)。

海上自衛隊最大の護衛艦『いずも』の重さ(基準排水量で2万t)を軽く凌駕する。そんな巨大で重厚な構造物が中空に架かることになるのだ。

独創的な外観デザインを支える巨大なアーチ構造や開閉式屋根(遮音装置)などはいずれも世界初の難工事だ。 引用元:東京新聞 http://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/culture_news/CK2014121202100027.html

独創的な外観デザインを支える巨大なアーチ構造や開閉式屋根(遮音装置)などはいずれも世界初の難工事だ。
引用元:東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/culture_news/CK2014121202100027.html

アーチの断片をどこかで造り、それらを現地でつなげていく作業だけで1年はかかると見られている。

2015年7月、8月中に発注し、2015年内に準備工事、2016年夏からアーチ部分の施工をスタートさせる予定だが、それでもギリギリだ。

そして、これだけの重さのものを安定させようとすると、地下にもアーチを支えるための構造物を造る必要がある。

これはスタジアム自体の基礎とはまた別の工事が必要で、しかもそれらの作業は同時に進行できない。

相次ぐ見直しを求める声。

しかし、今から見直しをした場合、ラグビーW杯にはとても間に合わない。五輪にギリギリ間に合うかどうか、という事態に陥る。

安倍政権内では2012年の国際コンペの際に検討された別の計画に変更する案などが浮上している。

現行案の水面下の準備が進む中で、浮上しつつある別案。

時間もない、金もない。果たして完成するのだろうか―。

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