安田純平さんが拘束か
2015年1月31日にフリージャーナリスト後藤健二さんがイスラム国(IS)に殺害されてから半年。
新たにフリージャーナリストの安田純平さんがイスラム過激派組織に拘束されたのではないかというニュースが飛び込んできた。
当初イスラム国(IS)に拘束されたという情報が有力だったようだが、現在では別のイスラム過激派組織であるという説が有力だ。
今回はフリージャーナリストの安田純平さんがどのような人物で、どのような経緯で武装勢力による拘束情報に至ったのかを解説する。
安田さんは2004年のイラク日本人人質事件で拘束された一人
フリージャーナリストの安田純平さんは、埼玉県入間市出身。
埼玉県立川越高等学校、一橋大学社会学部を卒業し、1997年に信濃毎日新聞に入社する。
信濃毎日新聞では敏腕イケメン記者として知られた。イロモノではなく、正統派=オーソドックスの取材ができる実力派記者だ。
かねてより中東情勢に関心があった安田さんは、突き動かされるようにアフガニスタンの現地取材をはじめる。
信濃毎日新聞は安田さんを文化部に異動させるが、安田さんは中東への想いを断ち切れず、2003年1月に信濃毎日新聞社を退社。
フリージャーナリストになり、イラクに滞在し、取材を続ける道を選んだ。
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命の危険
イラク滞在中に、イラク軍やイラク警察に数度拘束されている安田さん。
しかし、安田さんが2004年4月14日ファルージャ近郊で武装勢力に拘束されると、日本国民の注目が安田さんに集まった。
イラク日本人人質事件だ。
当時日本で流れたこの映像をご記憶の方も多いだろう。
動画に映っていた郡山総一郎さん、高遠菜穂子さん、今井紀明さんの3人が当時メインのバッシング対象となってしまったが、実はその他に「米兵・自衛官人権ホットライン」メンバーである渡辺修孝さん、安田純平さんも同時期に拘束され、映像の3人と同時期に解放されている。
その後安田さんは、軍事施設のコックをしながらイラクに滞在し『ルポ 戦場出稼ぎ労働者』を書くなど、一度は拘束され命の危険に脅かされながらも、イラクに留まり続けた。
ルポ 戦場出稼ぎ労働者
2012年、2013年にはシリア内戦を取材。
レバノンからシリアに密入国し、およそ5週間にわたって反政府側の「自由シリア軍」の支配地に滞在し取材した記録を日本国民に伝えた。
その後も安田さんはガジェット通信で自身の取材記録を連載。
現地の人が「死にたいのか?」というほど危険な戦場に果敢に乗り込んでいった。
ツイッターの更新がない≠拘束されている
安田純平さんが、拘束されているのではと懸念されるひとつの要因として、ツイッターの更新が途切れたから、ということがある。
事実安田さんは6月下旬の段階で、ツイッターの更新が途絶えていた。
しかし、直前のツイートが現在ツイッターでの発言が難しいことに触れている内容なので、意図的につぶやいていない可能性もある。
これまでの取材では場所は伏せつつ現場からブログやツイッターで現状を書いていたが、取材への妨害が本当に洒落にならないレベルになってきているので、今後は難しいかなと思っている。期間限定の会員制で取材経過までほぼリアルタイムで現場報告することも考えてたが、危険すぎてやっぱり無理そう。
— 安田純平 (@YASUDAjumpei) 2015, 6月 20
空爆や砲撃が激しく、地上戦も発生するような都市の場合、戦地からツイッターでつぶやくことは諦めるしかないと自身が記事で書いている。
関連リンク
ツイッターを更新しないと大変なことになるシリア〜安田純平の戦場サバイバル
政府が拘束情報を隠蔽している?
しかし、別の筋の情報として、安田さんがイスラム過激派組織に拘束されているという情報を日本政府がすでに把握しているのだという。
菅義偉官房長官は2015年7月9日の会見でこの情報を質問されると、「拘束されたとの情報には接していない」と否定。
岸田文雄外相も「少なくとも現在、邦人が拘束されたとの情報は入っていません」と同じく否定した。
官邸担当記者によると、安保法制の国会論議への影響を考えて隠蔽している可能性があるという。
今の段階で下手に情報が出れば、強行採決がふっとびかねない。
そのまま放置して、発覚したら、逆に『だからこそ安保法制が必要だ』という論議にすりかえる構えなのだろうか。
それとも、何度も拘束されて反省の色が見られない人物だから、“自己責任”だというのか。
イラク日本人人質事件が発生した当時、日本の世論は“自己責任論”に沸いた。
安田さん自身、この自己責任についての考え方を自身のホームページで記述している。
私自身の言動はすべて私自身の判断によるものです。その判断について、私の家族、親戚一同は誰一人かかわっていません。「自己責任の原則」とは、自分自身の行動についてのみ責任を負うということです。
したがって、私の言動に対する責任を私の家族、親戚一同に求めることは今後おやめいただくようお願いいたします。
私自身の身に何かが起こった場合でも「自己責任」ですので、「自己」ではない私の家族、親戚一同への取材は一切行なわないよう重ねてお願いいたします。
安田さんはもし自分の身に何か合ったとき「自己」以外にかかる迷惑を懸念していた。
政府は沈黙、そしてメディアさえ一行たりとも拘束に言及しないこの不自然な静けさ。
もし拘束されているのなら事態は進展していく。対応の遅れは最悪の事態を招くことになる。日本政府による正式な言及が待たれる。
2015年12月23日、国境なき記者団が「拘束」を明らかに
続報が入った。
2015年12月23日までに、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が、シリアの武装勢力が安田さんを拘束し、身代金を要求しているとの見解をホームページで明らかにした。
記事で国境なき記者団は、「安田さんの今後の安否を強く懸念している。日本政府に救出に尽力するよう求める」としている。
政府高官「日本政府は対応している」
このニュースを受けて政府高官は2015年12月23日、取材に対して「日本政府はしっかり対応している」と述べており、すでに拘束の情報は掴んでいることを明らかにしている。
無事救出されることがもちろん最優先事項だ。
しかし、武装勢力による2度目の拘束ということで、批判も集中しそうだ。
安田さんは今何を思うのか。何よりもまずは無事に帰ってきてくれるのを祈るばかりだ。
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