ギリシャは何故上から目線なのか
2015年7月13日朝、EUのトゥスク大統領がギリシャのユーロ圏離脱危機に終止符を打つ合意の成立を発表した。
これにより、チプラス首相率いるギリシャは、EUの指示通りに財政を健全化し、借金を返すことになる。
そしてEUは借金を返せなかったギリシャに、懲りずにまたお金を貸すという。
いま巷を賑わすギリシャ問題、なんとなくギリシャがクズなのはわかるけど、なぜクズなのか、デフォルトとは何か、なぜギリシャを放置できないのかをわかりやすく解説する。
なぜギリシャは借金まみれになったのか
ギリシャも最初から借金まみれだったわけではない。
ギリシャが借金まみれになった理由は、なんと「お金にルーズすぎる」から。
そんなことで借金まみれになるか、そんな馬鹿なと思われるかもしれない。
しかし、母親が無駄使いをしまくって、さらに父親がもらったばかりの給料をパチンコでスッてくる。
それで金が無いやといってサラ金からお金を借りているダメ家庭。
これをスケールアップさせたのがギリシャと思ってもらえばよい。
「国民に優しすぎる国」ギリシャが招いたデフォルトの危機と経緯
それではギリシャの無駄使いの内訳を見ていこう。
例えば年金。
ギリシャは61歳から、現役時代の8割の年金を貰えることになっている。
日本だと65歳から、4割~5割位だ。
それがそれよりもかなり前から貰える。
さらに公務員の給料が非常に良い。
2002年から2009年の間に大学卒公務員の給料は何故か40%も増えた。別にバブルでは無いのに、である。
ギリシャの公務員の数はなんと国民の30%をしめている(日本は5%)。
ギリシャは国民に多額のお金を渡しているのだ。
それ自体は非常にいいことだ。
しかし、もしその財源自体が無くて、借金だったらどうだろう。
恐ろしいとは思わないだろうか。
さらに国民も金にルーズだ。
税金をきちんと納めていない。
税金は所得の額に応じて払う必要があるが、所得をごまかして少なくして、税金を払う額を減らしているのだ。
そしてそのごまかされている額はなんとギリシャの税収のおよそ5分の1。
国が国民に渡すお金は増え続けるのに、国民が国に渡すお金は減っている。
とうぜん赤字が増えていく。足りないからである。
そして、その赤字をカバーしてくれていたのは誰か。
フランスやドイツなどの金融機関だ。
ギリシャは赤字を隠して国債を発行しEU各国に大量に売りつけたのだ。
国債は借金なので、期限がきたら利息を付けて返済しなければならない。
ギリシャはこの増え続ける借金を秘密にしていたのだが、2009年の政権交代時にバレて明るみになった。
ギリシャに巨額の赤字があると、国債を持っていてもお金が返ってくる保証が無くなってしまう。
ギリシャの国債を持っている人たちは当然激怒する。
そして国債を誰も買ってくれなくなると、ギリシャはお金を借りられなくなるのでデフォルト(債務不履行)に陥る。
ギリシャの国債は紙くずになってしまうのだ。
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ギリシャは「財政破綻」した場合どうなるのか
2015年7月13日、EUがさらにお金を貸してくれることになり、何とかデフォルトの危機を免れたギリシャ。
それでは、EUからの追加支援が得られなかった場合、ギリシャはどうなっていたのか。
EUからの支援が得られない場合、ギリシャはユーロが不足してしまう。
すると、年金や国民の30%をしめる公務員の給与を払えなくなってしまう。
となると、かつてのドラクマのような自国通貨を刷るしかなくなる。
しかし、”新ドラクマ”は信用がほとんどなく、暴落は必至だ。
2008年にデフォルト(債務不履行)したアイスランドを例にしよう。
自国通貨は75%も価値が落ち、冬場を乗り切るために必要なオイルを買うことすら、困難になってしまったのだ。
そしてギリシャも同じ道をたどる。
経済はいっそう減速し、国民の生活水準はさらに低くなってしまう。
でも、ギリシャ国民は甘い蜜を吸って生きてきたのだから、お灸をすえる意味で少しばかり痛い思いをしてもらってはどうだろうかと思う人は多い。
ギリシャ支援の金はユーロ圏の他国の税金である。
金を返せない奴に金を貸し続ける理由はどこにあるのだろう。
ギリシャがユーロ圏を離脱するとユーロの価値が落ちる
まず、ギリシャをユーロ圏から切り捨てた場合、他のユーロ圏が借金を被せられた格好になる。
さらにギリシャを助けられなかったのだから、同じユーロ圏で財政危機に瀕しているスペインとイタリアも救えないんじゃないかというムードが世界で広がる。
これにより当然ユーロの信用力が落ちる。
するとどうなるか。アメリカ・ドルが高値をつけ、ヨーロッパを中心に世界の株式市場が10%ほど値下がりする。
世界同時株安、言ってみればミニ・リーマンショックだ。
クロアチア、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニアなどヨーロッパの新興国では、これらの国から資本が引き上げられ、景気が低迷すると言われている。
また、ドルが高くなることでアジアやブラジル、南ア、メキシコなどの新興市場も取引条件が悪化する。
ギリシャは迷惑だから切るべきだが、切ったら傷口が世界に広がるからそう簡単に切れないのだ。
ギリシャを狙うロシアと中国の影
ギリシャをデフォルトさせるわけにはいかない、もう一つの大きな理由がある。
それは軍事的な話だ。
ギリシャがユーロを離脱すれば、債務の支払いが滞るが、そこでロシア、中国が資金援助することが考えられている。
地中海の港がほしいロシアは、クリミア半島を併合、さらに南下を進めている。
中国にとっても、中華圏の拡大でギリシャがシルクロードの終着点になる。
経済的に困窮したギリシャが、港や港湾施設を切り売りする可能性がある。
アメリカのオバマ大統領がこれを危惧し、住民投票の直前にEU首脳に電話をかけてギリシャの離脱を止めるよう働きかけている。
ギリシャ危機は、経済だけの問題ではないのだ。
ギリシャはユーロ圏にいくら返済すればいいのか
EUとの合意が成立し、支援を受け入れて一時的に危機をしのいだギリシャ。
借金の返済は日本ベースでいうとどれくらいの規模なのだろうか。
ユーロ圏内でギリシャ経済が占めるGDPの割合は2%、負債の総額は約2兆円と見られている。
そのインパクトは、日本で言えば大手家電メーカー1社が倒産するようなものだ。
潰れたら平均株価に多少の悪影響が出るだろうし、投資家のマインドも冷える。
だから政府が『潰すな』と号令をかけ、銀行団が延命させている。
いまのギリシャとEUはまさにそんな関係だ。
とはいえ、ギリシャが破綻することでEU圏内の金融機関はダメージを受け、ユーロの信用力も落ちる。問題はそれが世界にどの程度影響するのか、だ。
EUとの合意が成立し、一時的に危機をしのげても、それは根本的な解決にはならない。
そもそも、ギリシャの悲劇を生んだのは「国力が違うのに通貨が同じ」という矛盾からだ。
メジャーリーガーと高校球児が同じチームにいるようなもので、ドイツなどの大国とは国力が違いすぎるのだ。
誰がどう見ても問題の先送りでしかないとしか思えない、今回の決定。
ギリシャ国民が生まれ変わる日は果たして来るのだろうか。
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