認知症患者のケース別正しい対応
認知症が進むと、物忘れのほかに意欲低下、徘徊、物取られ妄想、暴力など、さまざまな症状が出ることがある。
不安や苛立ちを覚える家族も多いはずだ。
うまく向き合っていくためにはどう接したらいいのか?タブーな言動は何か?
あなたがいま一番知りたい、認知症患者への対応策をご紹介する。
食べ終わったのにごはんを催促する場合
量を減らしてまた食べさせる
夕食を食べてもまだ食べていないと言ってきたら、
「そっか。ちょっと夜遅いから少なめにしようね」
といって少量だけ与えるのが正解。
消化機能が低下し、すべて便になって排泄されてしまう人も多い。
たいした量を食べられるわけではないので、「食べてない」と文句を言ってきたら、量に気を付けながら食べさせてあげるのがよい。
好きだったことをしなくなる。周りのことに興味を示さなくなった場合
簡単な家事をやらせて褒めまくる
認知症は、症状が進みいろんなことができなくなって鬱っぽくなったり、無気力になることもある。
できることは本人にやらせるようにしないと、どんどんできなくなってしまう。
失敗を怖がり引っ込み思案になっている人に対してはお願いするのが一番だ。
「今夕食を作っているんだけど、少し手伝ってくれる?」
という風に、できることや簡単そうな作業をやらせて褒めまくるのが良い対応だ。
認知症の人は、成功体験を覚えていることが多いという。
人間誰でも、頼られるとありがたいものなのだ。
人と会いたがらない、外や病院、デイサービスに行きたがらない
一緒に買い物についてきてくれる?とお願いする
「家にいると認知症がもっと進むから」「今よりもっと悪くなるから」と否定的な言葉を言って外に連れ出そうとするのはタブーだ。
「一緒に買い物についてきてくれる?」など、ここでもお願いが模範解答。
目的のある行動には同意する人が多い。
回覧板を届けたり、掃除や買い物を手伝ってもらうのも手なのだ。
デイサービスに連れていく場合も、
「みんな楽しそうだよ。一回のぞいてみよう」などと誘ってみるとうまくいくことが多いという。
「あの人が寂しがっているから行こう」などと促すとよい。
家族の意見を聞かない場合は、友人や医師に言ってもらうと応じやすい。
団塊世代以上は、医師など「先生」に対しては年齢問わず尊敬の念を持ち、絶対的なものだという意識を持つ傾向にあり、効果が高い。
「友達もいるから行こうか」「待っている人がたくさんいる」と前向きな言葉で根気強く誘うと、ある日ひょっこりと行ってくれることがある。
冷蔵庫にスリッパ、タンスに汚れた下着を入れるなどのちぐはぐな行動をする場合
そっと片づける
冷蔵庫にスリッパなど、入れてはいけないものを入れたりする人もいる。
その場合、当然「やめて!」と怒ってしまいたくなる。
しかし、プライドを守るために、そっと片づけておくのが良い対応。
これは認知症の症状の一つ。
トイレで汚してしまった下着をタンスの中に入れてしまう人もいるのだ。
“やれやれまたやってるな~”と思いつつ、そっと戻しておくのが一番なのだ。
頭ごなしに叱りたいところだが、それはNG.
がっくりと落ち込んで消極的になるか、ひどく腹を立ててしまうことがあり、状況や病状が悪化するだけだ。
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同じものを何度も買いだめしてしまう
「買わなくていいもの」をメモで持たせる
一緒に買い物に行く
お店に協力を頼む
認知症患者は、1度同じものを買い始めると、しばらくそれを買い続ける特徴がある。
買わなきゃいけないという思いがあるので、行くたびに買ってしまうのだ。
対策としては、「買わなくていいもの」をメモで持たせたり、一緒に買い物に行く、お店に協力を頼むことが有効だ。
こだわりはだいたい半年から1年で変わっていく。
ずっとは続かないと考えて対応するのが良い。
大金を使ってしまう、金銭の管理能力が鈍る
使えないキャッシュカードを渡す
大金を持たせない
お金の問題は一大事だ。
多少恨まれても、お金は一度なくなったら返ってこないため、お金に関してはシビアに対応するのがベターだ。
悪徳商法に騙されたり、通販で何十万もする布団を買ってしまったりすることがあるため、お金が管理できなくなったら、取り上げること。
キャッシュカードを没収すると怒ったり納得しない場合は、渡すだけ渡して使えなくするとか、少額を渡すようにするなどの工夫が必要。
財布や通帳を盗られたと言い出す場合
共感して一緒に探す
同じ財布を複数準備して見つけさせる
基本的には「それは大変!」と言って共感して一緒に探して本人に見つけさせるのが良い。
「自分で無くしたんでしょう」などと責めたり否定するのはダメ。
認知症患者に「やっぱりあんたが犯人だった」と言われないための対処法がある。
それは、少額を入れた同じ財布を5つほど用意して、1つを目のつきやすい場所において自分で見つけさせるようにするのだ。
財布も孫からのプレゼントなどということにすれば、喜んで使ってくれることが多いので、孫がいる場合は使ってみてもよいテクニックだ。
しきりにどこかに出かけようとする場合(徘徊)
GPS機能のついたツールを持たせる
名前と住所を書いたワッペンを持ち物につける
福岡県大牟田市(おおむた)のように、徘徊地域の見守り体制が整っている自治体もあり、行政、消防、警察、福祉が一体となり地域ケアに取り組んでいるところも増えてきた。
身近にできる対策としては、GPS機能のついたツールを持たせることと、名前と住所を書いたワッペンを必ず持ち物につけておくことが大事だ。
認知症患者の徘徊には理由があることが多い。
できる限り、介護人が付き添い危険を回避しながら、好きに歩かせるのが鉄則だ。
「あの人を迎えに行かなければならない」という場合は一緒に行こうと話しながら歩いて、うまく家まで誘導する。
夜中に起きて叫んだり家中を歩き回る
パンを温めたものでも何でもいいから食事を出す
寝てる間もリビングのテレビや音楽を流し続け、明るくする
認知症患者にとっては目覚めた時間が朝だ。それがたとえ夜中の3時でもだ。
まずはいったん受け止めてあげる。
そして、「ごめんなさい、今朝は忙しいから簡単なものでいい?」などと言って少しだけパンを温めて出したりすると落ち着く。
夜中に目覚めて暗くて周りが見えないと不安に襲われてパニックになることがある。
そうならないために、家族が寝ている時間も、明るくしたままでテレビや好きな音楽を流し続ける部屋を用意するとよい。
もちろん、家族が付き合ってあげたり、隣であやしてあげられれば一番よい。
突然騒いだり手をあげたりする場合
昔の写真を見せたり好きな音楽をかけて相手の気をそらす
突然手をあげたり、騒いだりする場合は、とにかく相手の気をそらすことが肝心だ。
子供のころや若いころの写真をいつも見えるところに飾っておくとよいだろう。
昔好きだったレコードをかけるのも効果がある。
お手洗い以外で用を足す、便を壁などに塗りたくる場合
症状の改善より片づけの手間を楽にすることを考える
トイレのドアに『トイレ』と貼り紙をしたり、夜はトイレの明かりだけつけるなど、うまくトイレに誘導できるような工夫が効果的。
便を塗りたくる場合。
認知症患者にとって「便を塗りつけよう」と思って塗りつけているわけではないことに理解が必要。
私たちが手がベタついたら拭うのと同じことなのだ。
この場合は、症状の改善よりも、片づけの手間を楽にすることを考えること。
紙やビニールを壁に貼る、床に新聞紙や不要のタオルケットを敷く、掃除用具をいつでも取り出せるようにしておくことが大事。
漏らした場合は、細心の対応が求められる。
認知症初期の患者は下着を汚すのをとても恥ずかしがる。
汚れたズボンを見つけたらわざとお茶をかけて、「ごめん汚しちゃって、洗うから着替えよう」と演技するのも手だ。
食事や入浴、薬などを嫌がって拒否する
食べない→即入院
お風呂に入らない→デイサービスに任せる
薬→医師に相談、食べ物に混ぜる
食べるのを拒否した場合、命に直結するため、迷わずに入院させて点滴や管から栄養を入れる必要がある。
入浴を嫌がった場合にはデイサービスに任せてしまうのがよい。
薬を嫌がった場合は、医師に相談して減らす、できない場合はゼリーや甘みに混ぜて飲ませる。
[まとめ]上手な介護をするための大前提
いかがだっただろうか。
認知症患者と付き合っていくうえで、大事なことをまとめた「認知症患者と接するうえでの3大鉄則」というものが存在する。
認知症患者と接するうえでの3大鉄則
1 認知症の人の形成している世界を理解する
認知症の基本的な知識を身につけよう
相手の生い立ちや性格、好みを知ろうとしよう
2 患者の感情を大切にすべし
肯定、同情をして否定はしないようにしよう
相手と目線を合わせて接触しながら対応しよう
3 介護者自身の心身的・時間的余裕を確保
親族・医師・地域の手も借りよう
介護保険やデイサービスを利用しよう
ポイントは、介護者自身のケアも重要だということ。
無理せずに、介護保険やデイサービス、医師や地域の助けを借りて、少しでもストレスを減らすことも重要なのだ。
認知症患者を介護する場合、
相手を思いやり、同じ目線で接する
周りに頼ること、演技を楽しむ
ことが大事とされている。
認知症患者の感情やプライドを大切にして、相手の目線に合わせることがクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)工場につながっていく。
しかし、介護者がボロボロになったら患者も周囲も困る。手を抜くのも大切なことなのだ。
介護者と患者がうまく寄り添い、介護を頑張りすぎないことを考えることが何よりも大事だ。
認知症の人は出来事は忘れてしまっても、気分が悪いことはずっと覚えている。
1度怒らせると、あいつは何かイヤなやつというイメージを持たれてしまうのだ。
否定しても肯定しても認知症の患者は怒る。
だからうまくごまかすのが一番なのだ。
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