架空請求業者から『督促手続(支払督促)』が届いたら
架空請求業者から「利用料○万円を期日までに支払え」というメールや郵便物が届いたら、基本的には無視するのが正しい。
しかし最近は、無視をしてはいけないケースが増加中だという。
無視をしてしまうと、なんと国が代わりに身に覚えのないサイト利用料金を毟り取りに来るのだ。
今回はその“無視をしていけない”恐ろしい架空請求の実態と対応策をまとめた。
無視してはいけない架空請求の正体
2015年、大阪市内の男性に簡易裁判所から「特別送達」と書かれた封書が書留で届いた。
中身は身に覚えのない出会い系サイトの使用料7万円の支払いを督促するものだった。
男性は念のため司法書士に相談すると、「無視していると強制執行になる」と言われ、慌てて対応し、事なきを得た。
恐ろしすぎる。
この架空請求詐欺とは、いったいどんなカラクリなのか。
これは、『督促手続(支払督促)』という簡易裁判所で行われる法的手続きを利用した手口だ。
督促手続は、裁判所に債権者(この場合は架空請求業者)が申立てを行い、簡易裁判所の書記官が書類審査をした上で債務者(この場合は身に覚えのない一般市民)に支払いを命じる。
とても簡単な手続きだが、この支払命令には判決と同じ効力があり、財産差し押さえの強制執行も可能なのだ。
国の法的機関が詐欺師とタッグを組んで架空請求詐欺をする理由
なぜ公的機関である裁判所が、そんなに簡単に架空請求業者の申立てを受理してしまうのか。
なんと、裁判所は書類を見ただけでは架空請求かどうかを判断できないのだ。
そのため、よほどの不備がない限り申立ては受理されてしまうのである。
必要な書類さえ用意しておけば一度も裁判所に足を運ばなくても支払督促の申立ては可能。
これも顔バレしたくない架空請求業者にとっては大きなポイントなのだ。
驚くことに、架空請求業者は支払いの請求はもちろん、名前や住所も架空のものを使って申立てを行っている。
当然、詐欺罪にあたるが、いったん架空請求業者にお金を振り込んでしまえば、彼らはすぐに口座の金を移し替える。警察に訴えても戻ってくる可能性は低いのだ。
民事訴訟は、当事者が自分で努力をして権利を守るというのが基本的な考え。
不幸にもこの裁判所を悪用した架空請求詐欺のターゲットにされたら、自分の身は自分で守るしかない。
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同封の書類で異議を申し立てるだけでOK
では、実際に簡易裁判所から「特別送達」と書かれた封書が届いた場合、どう対応をすればいいのだろう。
裁判所から支払督促が送られてくると、中には「異議申立書」とその書き方の説明が同封されている。
これにきちんと記入し、最寄りの簡易裁判所に郵送するか、持ち込む。
期限は2週間以内。絶対に放置してはならない。
書き方がよくわからなければ、司法書士や弁護士、あるいは裁判所や国民生活センターに相談するのもオーケー。法テラスでもよい。
その異議申立てを行なうと支払督促は失効し、通常訴訟に移行するのだ。
「異議申立書」を送ると正式に裁判になる。
なんで架空請求業者と裁判しなきゃいけないんだよ!と思うかもしれないが、裁判に持ち込むことが重要なのだ。
裁判になると申立人(架空請求業者)は請求権の立証をしなければならず、さらに口頭弁論に出廷の必要もある。
架空請求だから立証不可能な上に、出廷の際の顔バレのリスクを考えると、大半の架空請求業者は手を引くのだ。
つまり、当然架空請求なのでボロが出るため、詐欺師は訴訟を取り下げるのだ。
異議申立書を送らない=払いますという意思表示
それでは「異議申立書」を送らないとどうなるのか。
裁判所からの支払督促というのは、「債権者がお金を返せと言っているけど、あなたに文句(異議)が無ければ、払ってください」という裁判所からの通知だ。
これに異議を申し立てないということは、
「はい、払います」
ということを意味するので、問答無用で敗訴になってしまう。
つまり覚えのないサイト利用料金を強制的に払わされることになる。
これが、異議申立書を絶対に送らないといけない理由だ。
異議申立て後は念のため出廷するとより安心
異議申立書を送付すると、大抵の架空請求業者は手を引く。
しかし、手続き上は裁判に移行するので、出廷をする必要がある。
通常訴訟に移行した場合は、原告と被告、どちらも2回連続で出廷しないと自らの主張を取り下げしたことになってしまう。
架空請求業者が出廷する可能性は限りなく低いが、ゼロではない。
念のため出廷しておいたほうが安心だ。
「少額訴訟手続」を悪用した架空請求にも注意
ちなみに、法務省のホームページでは、督促手続と並んで「少額訴訟手続」を悪用した架空請求にも注意を促しているので解説しておこう。
「少額訴訟手続」は申立人、つまり債権者(架空請求業者)が裁判所に出廷して明確な証拠を提示しなければならない。
彼らにとっては通常訴訟と同じようにハードルが高い。
今のところ、少額訴訟手続による被害を心配する必要はないだろう。
裁判所の送る特別送達を偽装しているケースもある
最後に、架空請求業者が裁判所の送る特別送達まで偽装しているケースがあることを書いておきたい。
気が動転して封書に書かれていた電話番号に連絡すると、その先は架空請求業者。
口車に乗せられてお金を振り込んでしまうなんてケースも想定される。
また、本物の特別送達と別に、和解金を求める文書が別に送られてくるケースもあるという。
電話帳や国民生活センターといった信頼できるリソースから電話番号を調べるなどの冷静な対応も重要になるだろう。
ますます巧妙化する架空請求詐欺の手口。
面倒でも、冷静な判断と迅速な対応を心がけよう。
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