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高級ウォークマンSONY「NW‐ZX2」のバッテリーが倍になった理由―平井社長はZX1を愛用していた

高級ウォークマンSONY「NW‐ZX2」のバッテリーが倍になった理由―平井社長はZX1を愛用していた

最高級ウォークマンNW‐ZX2はどれくらい“スゴい”のか
業績が急落した2003年の”ソニーショック”以来、低迷を続けるソニー。2014年秋には、連結最終損益予想を下方修正、2300億円の赤字とした。

そんな悩めるソニーが「ついに復活のノロシを上げた」とまで言わせるほどの製品が登場した。

それは「ハイレゾウォークマン」の最上位モデル、NW‐ZX2。

とにかく最高の音質を求めたという新製品で、価格はなんと約12万円

『音のソニー』はどこまでも音質にこだわるべきで、市場で利益を得るにはハイエンド(上級の)商品が必要だと再認識した結果生まれた、ソニーの原点回帰とも呼ぶべきウォークマンだ。

電気設計担当の吉岡克真氏によると、設計陣が素材からこだわりにこだわり抜いて、これまでの製品とは次元の違う高音質を作り上げたのだという。

では、“次元の違う高音質”とはいったいどういうことなのか。

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レコード、CDの次の進化「ハイレゾ」に対応

NW‐ZX2は、“ハイレゾ”と呼ばれる規格に対応しており、これが次元の違う高音質の秘密だ。

ハイレゾは、これまでの録音、再生の形式では捨てられてしまっていた音の細部までも拾い上げ、高音域や小さな音をCDの3〜6.5倍の情報量で表現できるというもの。

当然ながら、CDの数倍の情報量を持つので音源はCDからではなく、ウェブで配信されている“ハイレゾ“に対応したオーディオファイルを取り込む必要がある。

商品企画担当・田中光謙氏によると、“ハイレゾ”は、
「録音したときの空気感そのままの、”マスタークオリティ”の音をお客様に届けられる。ハイレゾはレコード、CDと並ぶ音の世界の3大進化のひとつだと思います」 
という。

ZX2では部品をイチから選び直した

ZX2は2013年11月に開発をスタート。

ひとつ前の型のZX1は、旧モデルの後継という位置づけだったため、制約があったが、ZX2では部品をイチから選びなおしている。

メカ設計担当・青木祐也氏によると、素材は銅やアルミなど3〜4種類を使用し、小さな部品ごとに素材やメッキの組み合わせを変えて、機体のパターンは数十に達したという。

基板とフレームをつなぐ数ミリの部品にまでこだわったという、商品にかける情熱は相当なものだ。

ユーザーが所有するハイレゾ音源すべてを収容できるように、容量は128Gメモリを採用。 さらにmicro SDカードスロット経由で拡張も可能だ。
ユーザーが所有するハイレゾ音源すべてを収容できるように、容量は128Gメモリを採用。
さらにmicro SDカードスロット経由で拡張も可能だ。

アルミの削りだしにしないとこの音は出ない

電気設計担当の吉岡克真氏は、部品を変えては試聴を繰り返す日々が続いたという。

ヴァン・ヘイレンをはじめ様々なジャンルの曲を何度も聴き、わずかな音質の違いを確認していった結果、ZX2のフレームは銅板を重ねたアルミの削り出しにしたそう。

加工に時間がかかるぜいたくなシロモノだが、これを使わないとこの音にはならないのだという。

携帯オーディオなのに外観のフレームで音が変わるなんて、素人からしてみたらオーディオマニアの戯言としか思えない。

しかし、こんな異常なまでのこだわりに基づいて1年以上も気の遠くなるような作業を繰り返した結果、最良のものが生まれたのだ。

機能面でも改良を加えた。自宅では、ウォークマンからワイヤレススピーカーにデータを伝送して聞くユーザーも多いため、ZX1では使わなかった新たな伝送方式を採用したという。

平井社長が愛用するZX1を超えるものを

それにしても、コストカットに躍起になってきたソニーがここまで徹底した研究とお金に糸目をつけない開発ができたのは何故だろうか。

そこにはエンタメ出身の平井一夫社長がZX2の開発に注目していたことが大きかったという。

電気設計担当の吉岡克真氏によると、平井社長は前機種ZX1を愛用していたそうで、『次ができたらぜひ聴かせてくれ』と楽しみにしていたという。

そして、平井社長はZX2の完成前にいち早く体験した。

そこで『移動中に飛行機で使っていて電池が早く切れるから改善してほしい。アメリカ西海岸までは行けるように』と指令を出したという。

それで、ハイレゾ再生で30時間という、ZX1の倍はもつように設計されたのだ。

まったく新しい音楽体験ができる

前機種ZX1は、スピード感のあるロックやポップス向きで、『音が硬い』と指摘されることがあった。

しかし、ZX2では、価格に見合った上品で優雅な、大人のサウンドを実現しているという。

ZX2では販売ターゲットを広く想定。ハイレゾを聴いたことがなかったり、iPhoneなどスマートフォンで音楽を聴いたりするユーザーにも売り出していくつもりなのだという。

実際にZX2で音を聴けば、まったく新しい音楽体験ができる。ヘルツとかビットとか、数字を見るだけではわからない価値を感じられる一台だ。

モノづくりの原点に還り、技術のソニーを復活させる―。ZX2は4Kテレビと並び、その第一歩と位置づけられている。

前社長のハワード・ストリンガー氏の時代、当時の社内の音質委員会の委員長が記者に、「ソニーには音の匠は必要ない」ともらしたという。

その暗黒時代を耐えきったエンジニアたちが”音のソニー”を再び築き上げようとしているのだ。

NW‐ZX2

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