御嶽山と富士山が同一プレート上にあるという恐怖
9月27日に発生し、死者50人以上という戦後最悪の火山災害となった御嶽山(おんたけさん)噴火。
こぶし大の噴石が秒速約200mで容赦なく降り注ぎ、大きなものでは軽トラックくらいの岩石もあったという証言もある。
それに当たったことによる外傷性ショック、火山灰を吸い込んだことによる窒息、火山ガスに含まれる硫化水素による中毒など、被害者の死因は様々だ。
御嶽山は噴火警戒レベルが5段階で最低の1(=平常)と判定されていた。
つまりまったく無警戒に近く、多くの登山家がふいを衝かれ、被害にあってしまった。
日本には世界の約1割、110もの活火山があるが、もはやいつどこが噴火してもおかしくないという。
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M8.5以上の大地震が来た場合、3~4年以内に必ず噴火が起きる
火山活動に詳しい立命館大学歴史都市防災研究所教授・高橋学氏によると、世界の例ではマグニチュード8.5以上のプレート型地震が来た場合、3~4年以内に必ず噴火も起きているという。
地震がプレートに影響を与え、地下のマグマの量が増えるためだ。
東日本大震災があったため、関東周辺の各所で火山が爆発することを、当然のこととして警戒しているという。
予兆…御嶽山付近では小規模な地震が頻発
2014年9月に入ってから、長野・岐阜の県境にある御嶽山付近では小規模な地震が頻発していた。
前出の高橋教授によればそういった場所が他にもあるという。
岐阜県の焼岳
まずあげられるのが岐阜県の北端にある焼岳。ここも御嶽山と同時期から群発地震が起き始め、震源の深さがほぼ0km。これは火山活動と考えられている。
特に危ない草津白根山
長野と群馬の県境にある草津白根山の付近でも群発地震が発生しており、草津白根山は特に危ないと考えられている。
2014年12月くらいまでには何らかの兆候が見られる可能性が高く、いつ御嶽山のようになってもおかしくないという。
事実、草津白根山の警戒レベルは2014年6月3日に引き上げられ、現在は噴火警戒レベルが2(=火口周辺規制)に設定されている。
東京工業大学火山流体研究センター・草津白根火山観測所の神田径(わたる)准教授によると、2014年3月頃から地震活動が活発になり、4~5月はさらに多い状態になったという。
7~8月には突発的に、1日に150回ほどの地震が観測されることもあり、月で数えると1000回ほどにもなる。平常時では月に30回ほど。
地殻変動という意味では、火山体の膨張が傾斜計で観測されるようになった。
今のところ噴火につながるような直接の兆候はないが、警戒が必要だという。
草津白根山の火口と草津温泉街は直線距離でわずか約7㎞だ。
御嶽山噴火は富士山噴火のサイン
地震学者の琉球大学名誉教授・木村政昭氏は箱根山と富士山を挙げている。
現在の富士山は最近、低周波地震が観測されており、活動期に入っていると考えていいという。
低周波は液体を通ることで発生する。つまり富士山の下でマグマが上昇してきているということだ。
富士山と同じ富士火山帯にある箱根山も常時、熱を発散しているため、注意が必要だ。
富士山は過去3200年間でおよそ100回噴火している。
平均すれば30年に一度だが、宝永噴火(1707年)以来、噴火しておらず、火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣氏も「富士山はいつ噴火してもおかしくない」と明言するほどだ。
地殻変動解析の専門家で元前橋工科大学教授・濱嶌良吉氏によると、富士山のほうが、御嶽山より先に噴火すると思っていたくらいだという。
二つの山は同じ太平洋プレート上に位置しており、つまりマグマのエネルギー源が同じなのだという。
御嶽山は1979年の噴火の前は何万年も噴火しておらず、つまり御嶽山が噴火したということは、この周辺のプレートのひずみや火山が限界にきているということの表れ。
富士山が連動する可能性は十分、そしてその地盤の延長上にある箱根山が連続して噴火する危険性もあるのだ。
富士山噴火で懸念される最悪のシナリオ
富士山噴火によって、懸念されるのは南西約90kmに位置する中部電力・浜岡原発への影響だ。
火砕流やマグマが届く可能性は低いが、風向き次第で火山灰が降灰することが専門家によって指摘されている。
元日本原子力研究所研究員で技術評論家の桜井淳によると、浜岡原発を火山灰が数cm以上包むようなことがあれば、恐らく何らかの機能的な影響は出てくるという。
送電線に火山灰が大量に溜まってショートしたり、原発内の変電所などの設備に火山灰が付着することで外部電源が機能喪失することは十分に考えられる。
もし非常用の発電施設も機能しなくなれば、冷却設備がストップし福島第一原発のようになってしまう可能性がある。
さらに火山灰が数十cm積もれば、交通の機能もマヒし、原発のトラブルに対処する人材が現場に向かうことも困難になってしまう。
火山学者の金沢大学名誉教授・守屋以智雄氏によると、噴火によって富士山で山体崩壊が起きれば、岩屑(がんせつ)なだれが発生する恐れがあるという。
40~70km先まで土砂が流れ出し、駿河湾に大量の土砂が入る可能性があるという。
地震による津波が浜岡原発を襲う心配がある。
そもそも原発は噴火による影響を想定していないため、国は原発の再稼働についてあらためて考慮する必要があるだろう。
自然の前に我々はあまりにも無力だということ。そのことを強く認識しておく必要があるだろう。
現在、御嶽山では有毒ガスや深さ50cmほども積もった火山灰などの悪条件が重なり、救助活動は困難を極めている。
火山性微動(数十秒以上にわたって長く続く揺れ。地下のマグマや熱水の移動が原因と考えられる)が継続しているので、再び同程度の噴火が起こる可能性もあり、予断を許さない。
気象庁の火山噴火予知連絡会は今回の噴火を「水蒸気噴火」と発表したが、これは一体どのようなものか。
火山地形学を専門とする金沢大学名誉教授、守屋以智雄氏によると、「水蒸気噴火」とは、マグマで熱せられた地下水が沸騰し、爆発するというものだという。
マグマが上昇し地表に出る『マグマ噴火』や、高温のマグマが直接地下水に接して爆発する『マグマ水蒸気噴火』と違って、マグマそのものは出てこないのが特徴だ。
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