
堀潤が語る“古巣”NHKへの思い
NHK『ニュースウォッチ9』や『Bizスポ』に出演、女性たちから絶大な支持を得ていたアナウンサーの堀潤。
堀氏は2011年の東日本大震災以後、反原発発言やNHKの〝誤報道〟への謝罪や批判をtwitterで発信し続け、その姿勢が同局内で問題視されるようになる。
局内で行き場を失ってしまった堀氏は、当時担当していた番組『Bizスポ』の終了に伴い、2013年にNHKを退職。
UCLAに留学したのち、客員研究員としてデジタルメディアを研究。
その傍らで、日米各地で原発の取材をし、ドキュメンタリー映画『変身』の制作に打ち込むなど、ジャーナリストとして活動を続けている。
ドキュメンタリー映画『変身』
そんな堀氏だが、現在もテレビ・ラジオで複数の番組を担当しており、2014年秋からはスカパーの新番組MCにも就任した。
ジャーナリストとして多彩に活躍中の堀潤から見て、現在のNHKはどう映るのか。
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堀潤が明かすNHKの人事事情
堀氏は2014年10月から『BSスカパー!』で日曜の午後9時から放送されている『モノクラ~べ』について番組の進行役を務めている。
この番組では、毎回ある“モノ(商品)”が欲しい芸能人がゲストとしてスタジオに登場。
その“モノ”とは家電であったり、専門店のスーツ、はたまた人気ファストフード店のイチオシメニューであったり、ジャンルは問わない。
番組サイドが人気商品を2つピックアップして、商品のウリを独自の回線で徹底比較し、さまざまな角度から検証して、ガチンコ対決させてから最終的にゲストにどちらかを選んでもらう。
「どっちがいいのか?」という消費者の素朴な疑問に答えを出してくれる番組だ。
こんな番組は、NHKはもちろん、CMスポンサーが存在する地上波の民放ではとうてい放送不可能なのは言うまでもない。
そんな画期的な番組のMCを務めることになったのがジャーナリスト、堀潤。
堀氏といえば元NHKアナウンサー。
2013年にフリー転身後、2015年現在テレビ5本、ラジオ1本のレギュラーを持つ売れっ子だ。
いま、堀潤は古巣NHKをどのように見ているのだろうか。
学生時代のマスコミ不信
堀潤が学生時代、オウム真理教の事件がマスコミを賑わせていた。
堀はまったく関係ない夫婦が容疑者のように扱われていたこともあり、マスコミに対して不信がすごくあったという。
しかし自分はエリート会社員になれるわけでもなく、医者とか弁護士になれるわけでもない。
でも、社会の役に立ちたい。
だったらメディアに進むしか無いかなと思いNHKに就職することを決意する。
当時は就職氷河期。
堀はそんなにうまくいかないだろうと考えていたという。
「ひと通り就活してダメだったら1年間休学して、世界を旅して帰ってきたらフリーで、くらいに思っていました」
しかし堀の予想に反し、NHKに受かってしまう。
フジテレビもテレビ朝日も最終面接まではいったというがツメが甘かったという。
入局してすぐ岡山勤務を命じられる
NHKの職員は入局してすぐにほぼ全員、東京以外の地方局に配属される。
アナウンサーだけでなく、ディレクターも、記者もだ。
そこでだいたい3、4年、もしくは5、6年。次の任地でまた5、6年。また次に行って5、6年。
東京に戻ってくるにはそれくらい時間がかかる人もいれば実力があって引っ張られる人もいるという。
2001年当時、新入職員の彼にとってNHKは“想像以上”の放送局だったという。
「こんなに素晴らしい職場はないと思いました。とにかく取材に行った先々で、おばあちゃんなんかが手を合わせて喜んでくれるんです。『よくまあこんな田舎の小さな話を拾いに来てくれましたね』って。」
NHKは視聴率はあまり関係ないため、数字を意識した番組内容でなくてもよい。
“地方のすたれかけている藁細工を守っているおばあちゃんに会いに来ました”というのも取り上げられるという。
「取材先には喜んでもらえるし、なおかつ、給料ももらえる。こんないい仕事はないと思いました」
しかし、そんな思いは長くは続かなかったという。
押し寄せてきた不祥事の波
入局して2年が経つ頃、パラダイスだったNHKに不祥事の波が押し寄せてきたのだ。
「いままで手を合わせてくれて喜んでくれていた人たちが一斉に手のひらを返すように怒り始めました」
これに対しNHKは《信頼回復運動》と呼ばれるものを行った。
局員一丸となり、アナウンサーも総出で、仕事が終わった夜9時以降に、受信料の支払いが止まったお宅を1軒1軒回って、「すみません、NHKです。申し訳ありませんでした」と頭を下げるというものだ。
堀潤も空いた時間に1日に何十件も「申し訳ありませんでした」という電話をかけたという。
みじめな状況。しかし堀は逆に開眼したという。
「多くの意見を聞くことによって、NHKに限らず、マスコミへの不信感とか期待感、何をやってほしいかが逆に明確にわかったタイミングでもあった」という。
みんなが“みなさまのNHK”だというなら、もっと“みなさま感”を考えたほうがいいと思うようになったという。
視聴者とテレビ局が双方向でやりとりできて、放送の中には本音が満ちあふれている。そのようなものを目指すべきだと考えたという。
このときの《運動》がいまの堀をつくったのだ。
民放の女子アナとNHKの女子アナはどこが違うのか
いろいろ話題に上がる女子アナ。
NHKの女子アナが民放の女子アナと大きく異なる点はどこなのか。
堀は「奥さま方が見ていて“自分の息子の嫁にしたい”と思うような女性」だという。
美人だから選ばれるわけじゃなく、どことなく気立てがよくて気がきく。“日本のお嫁さん像”そのものだという。
ときどき“ミス○○”みたいな人を採用するときもあるそうだが、そういう人も4~5年、NHKにいるとホンワカした雰囲気に変わってしまうのだという。
「ただ、エースはやっぱり有働さん」だという。
NHKの給料
堀潤が気になるNHKのお給料について明かす。
「新入職員の給料は、民放の約半分。完全に年功序列、終身雇用制なので、給料は階段のように上がっていく」という。
ある程度の管理職になると年俸制になり、一般企業と同じなのだそうだ。
退職したいま、NHKに寄せる思い
堀は、NHKを辞めても、フリーのNHKマン、フリーの公共放送人のつもりだという。
だから、最終的にはNHKが“よくなること”がミッションだとか。
「外に出てみると、外側にはもっと面白いことをやろうという仲間がたくさんいるので、外側から面白いものをたくさん作っちゃえば、NHKも最終的にそうならざるをえないと思うんです」
堀は、「究極の公共放送」を目指しているのだ。

引用元:堀潤 Facebookページ
堀潤『僕がメディアで伝えたいこと』(講談社現代新書)
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